モバイルアプリの価格テスト
価格テストを実施するためのエンドツーエンドソリューション。

モバイルアプリにおける A/B価格テストは困難です。適切に実施するには、ユーザーのコホート分け、データ収集、データ分析を効果的に管理しなければなりません。さらに、サブスクリプションが絡むことで複雑さが増し、多くの開発者はこの問題に取り組まないか、あるいは誤った方法で実施してしまうのが現状です。
RevenueCatの使命は、開発者がより多くの収益を得られるよう支援することです。そして価格設定は、収益を増やすための最も効果的な手段のひとつです。価格テストはうまく行うのが難しい反面、価格変更の影響を測定するための最良の方法でもあります。
私たちは、難しいことを簡単にするのが大好きです。だからこそ、この課題に正面から取り組みました。その結果としてご紹介するのが「Experiments」です。これは、モバイルサブスクリプションアプリにおける A/BテストをRevenueCatなりに再定義したものであり、アプリ内でテンポよく、かつ高精度な価格テストを行うための最も簡単な方法です。
A/B テストの数学的背景
典型的なA/Bテストは次のように行われます:ユーザーをランダムに 2 つのコホートに分け、それぞれに異なるバージョンのアプリを表示し、各グループのうち何人が特定のアクションを実行したかを測定します。このアクションには、ボタンのクリック、サインアップ、Twitter への共有などが含まれるかもしれません。オンラインで見つかる多くのA/Bテストの有意差計算ツールは、この ような状況を前提にしています。統計学的には、これは「二項実験(binomial experiment)」と呼ばれ、試行は「成功」または「失敗」のどちらかになります。この場合、「成功」とは、ユーザーが意図したアクションを取ったことを意味します。

しかし、価格テストのようなケースでは、あまりうまく機能しません。
数学的な計算はやや複雑ですが、二項実験を実行した後には、一方のグループの成功率がもう一方より高いかどうか、またそれが単なる偶然ではない可能性(=統計的に有意である可能性)を判断できます。この「偶然ではないと判断できる確率」が 有意性(significance) であり、これこそが実験を適切に行うのが難しい理由の中心です。
価格テストにおける成功の測定
二項実験は、アプリ内の多くの領域をテストするには非常に優れた手法です。しかし、「成功」の基準が単純に「ユーザーがあるアクションを取ったかどうか」だけでは測れないケースもあります。
価格テストはその代表例です。購入したかどうかを測るのは二項的(購入した/しなかった)ですが、価格が変わると話は変わります。
たとえば、価格を下げることで購入者が増えるかもしれませんが、それが収益の増加につながるとは限りません。つまり、「はい/いいえ」の購入判断だけでは価格変更の影響を正確に測定できないのです。
さらに、ユーザーのサブスクリプション状況も複雑です。
― トライアルを開始したか?
― 有料プランに転換したか?
― 何回更新したか?
こうした要素が絡むと、成功の測定はすぐに非常に複雑になります。
アプリのサブスクリプションには細かい違いがあり、価格変更がカスタマージャーニー全体のサブスクリプションライフサイクルにどのような影響を与えたかを理解しない限り、価格実験をうまく行うのは非常に困難です。
この課題を解決するために、私たちはサブスクリプションライフサイクルの全体像を一望できる仕組みを構築しました。これにより、価格実験の影響を簡単に確認・理解できるようになります。
サブスクリプションのライフサイクル
価格実験の目的は、どの価格設定が顧客1人あたりのライフタイムバリュー(LTV)を最大化するかを把握することです。LTVとは、一定の期間にわたって得られる収益のことを指します。
この「一定の期間(time horizon)」は、ビジネスによって異なります。
ある企業では1年間、または3年間で測るかもしれませんし、期間を制限せずに測ることもあるでしょう。いずれにしても共通しているのは、長期間にわたって得られる価値を対象にしているという点です。
これがサブスクリプションビジネスの「恩恵」であると同時に「難しさ」でもあります。
開発者が継続的に価値を提供し続けることで 、ユーザーは更新という形でその価値を返してくれます。
しかしその一方で、あるユーザーから最終的にどれだけの価値が得られるかは、サブスクリプション開始時点では分からないという問題もあるのです。
RevenueCat Experiments のご紹介
私たちは、サブスクリプションのライフサイクル全体を考慮しながら、モバイルアプリの A/B 価格テストを簡単に実施・分析・結論付けできるようにするために「Experiments」機能を開発しました。
すでに RevenueCatの「Offerings」を使ってアプリ内で提供するプロダクトを設定している場合は、すぐに Experimentsを利用開始する準備が整っています。
テストしたい2つのオファリングを設定し、実験を有効にするだけで、RevenueCatが自動的に顧客を2つのバリアントに均等に振り分けてくれます(詳しい情報はこちらをご覧ください)。
価格テストの結果をどう評価するか
忘れてはならないのは、価格実験の最終的な目的は「ライフタイムバリュー(LTV)」を伸ばすことだという点です。
そのため、価格実験が最終的に顧客ごとの LTV にどのような影響を与えるかを分析する際は、サブスクリプションライフサイクルの指標を次の3つのカテゴリに分けて見ると効果的です:
- 初回コンバージョン(Initial conversion): これは、顧客が無料トライアルを開始する(または何らかのオファーを受け入れる)タイミングであり、価格実験の影響が最も早く現れるポイントです。
- 有料顧客(Paid customers): 多くのサブスクリプションビジネスにおいて、ここが収益を生み出すサブスクライバーへの移行点であり、LTV への本格的な貢献が始まる段階です。
- 収益(Revenue):実験期間中に得られた収益は、該当コホートの「実現された LTV(Realized LTV)」とみなすことができます。ただし注意すべきは、LTV は時間の経過とともに成長するという点です。実験コホート内のアクティブユーザーを維持できれば、今後さらに LTV は伸びていきます。現在の収益はあくまで「現時点のスナップショット」にすぎず、価格変更の真の影響全体を完全に表すものではありません。また、LTV の成長速度は、価格実験の内容や有料顧客の構成(例:年間購読者の割合と月額購読者の割合)によっても異なります。
RevenueCat では、これらの各カテゴリに対応した特定の指標を提供しており、価格実験によるパフォーマンス変化の要因を明確に把握できるように設計されています。
初回コンバージョン | 有料顧客 | 収益 |
初回コンバージョン数 | 有料顧客数 | 実現されたLTV(収益ベース) |
初回コンバージョン率 | 有料化率(有料プランへの転換率) | 顧客1人あたりの実現されたLTV |
トライアル開始数 | アクティブなサブスクライバー数 | 有料顧客1人あたりの実現された LTV |
トライアル完了数 | 離脱したサブスクライバー数 |