Sebastian Röhl氏は、インディーアプリ開発者として偶然成功したわけではありません。伸び悩むアプリをリリースし、燃え尽き、もう一度やり直し、そしてようやく成長が積み重なり始める瞬間を迎えました。

最新の Sub Club エピソードでは、HabitKit と FocusKit を手がけるインディー開発者である Sebastian氏 が、アプリ開発におけるゆっくりとした、不確実な“中盤”について語ります。成長の停滞、はっきりしないシグナル、そして何も機能していないように見える状況でも続けるという決断についてです。

これは一夜にして成功した物語ではありません。粘り強さ、タイミング、そして基本を十分にやり切ることで、やがて成長が着地できる場所をつくる――そんなストーリーです。


安定した仕事から、自ら設定した期限へ

ドイツでコンピューターサイエンスとソフトウェアエンジニアリングを学んだ後、Sebastian氏は C#、.NET、Angular を扱うエンタープライズ向けソフトウェア企業に就職しました。刺激的な仕事とは言えませんでしたが、確かな基礎力と、経験豊富なエンジニアたちと働く機会を得ることができました。

同時に、彼の中では自分自身のビジネスを築きたいという思いが静かに膨らんでいました。そして3年後、具体的なプランがないまま退職し、自らに明確な制約を課します――「12か月以内に何かを形にする」と。

エピソードの中で Sebastian氏が語っているように、彼は洗練されたビジネスアイデアを持って会社を辞めたわけではありません。ただ、自分のために何かを作りたいという思いと、その手段としてモバイルアプリがしっくりきていた――それだけでした。


最初のアプリは失敗ではなかった――だが、うまくもいかなかった

最初の挑戦は LiftBear というワークアウトトラッカーでした。Sebastian氏が自分のために作ったアプリです。彼は素早くリリースし、ベータテストは行わず、進捗を Twitter で公開する以外のマーケティングもほとんどしませんでした。

結果は、落胆させられるものでありながら、多くを学ばせてくれるものでした。

LiftBear は一定数のユーザーを獲得し、最終的には月間経常収益(MRR)約 150 ドルに落ち着きました。完全に失敗したわけではありません。しかし、成長もしていませんでした。6か月にわたってアップデートや細かな改善を続けたものの、進捗は止まってしまったのです。

Sebastian氏はこの時期を、強いモチベーション低下を感じた期間だったと振り返ります。アプリが明確に失敗しているわけではない。しかし、さらに注力すれば状況が変わるというシグナルも見えない――そんな状態でした。


HabitKit は、瞬時に共感を生んだ一つのビジュアルから始まった

HabitKit は、よりシンプルなアイデアから生まれました。GitHub のコントリビューショングリッドのような形式で、習慣の継続を可視化するトラッカーを作りたい――それが出発点でした。

最初のスクリーンショットを公開したとき、反応は即座に現れました。エンゲージメントは急増し、フォロワーも増加し、ローンチ前にもかかわらず、初めて明確な関心が示されたのです。

そのシグナルは、彼のエネルギーを一変させました。Sebastian氏は HabitKit に全力で集中し、約2か月の開発を経て最初のバージョンをリリースしました。

スタートアップの基準で見れば控えめなローンチでしたが、インディー開発者にとっては意味のあるものでした。初日の売上は約 150 ドル。何より重要だったのは、人々がこのプロダクトを瞬時に理解してくれたという事実でした。


公開開発は初期には有効だった――しかし長期的な成長エンジンではなかった

初期段階では、公開開発(building in public)が重要な役割を果たしました。HabitKit が最初のユーザーを獲得し、初期レビューを得て、最初の勢いを生み出す助けになったのです。また、静かな立ち上げ初期の数か月間において、Sebastian氏に責任感とモチベーションを与える存在でもありました。

しかし、最大の成長の瞬間はソーシャルメディアから生まれたわけではありませんでした。

ローンチから数か月後――Sebastian氏がすでに週4日勤務の仕事に戻った後――HabitKit は突如として、ドイツや英国を含む複数の App Store 地域で「habit tracker」というキーワードでランキング入りし始めました。その後、Google Play でも同様の動きが起こります。

バズ投稿があったわけでも、大きなメタデータ変更があったわけでも、明確なきっかけがあったわけでもありません。Sebastian氏自身も、なぜ起きたのかは分からないと語っています。ただ一つ明確だったのは、HabitKit がある閾値を超えた瞬間に、ダウンロードと収益が一気に加速したということです。

それは、これまで積み重ねてきたプロダクト品質、レビュー、そして一貫性といった取り組みが、ようやく報われた瞬間でした。


仕事に戻ったことは、物語の終わりではなかった

最初に設定した 12 か月の期限が過ぎた時点で、HabitKit はまだ Sebastian氏をフルタイムで支えられる状態ではありませんでした。彼は以前の会社に戻り、週4日勤務し、金曜日を自分のアプリ開発に充てることにしました。

その“セーフティネット”は、彼に安定と時間をもたらしました。

それから6〜7か月後、HabitKit の成長はもはや曖昧なものではなくなっていました。オーガニック経由の発見が積み重なり、収益も着実に増加。Sebastian氏は再び退職する決断を下します。今度は希望ではなく、明確なトラクションに裏打ちされた判断でした。


FocusKit は多角化ではなく、モチベーションのためだった

長年ほぼ HabitKit に専念してきた中で、Sebastian氏は別の停滞にも気づきました。それは、自身のモチベーションです。

アップデートは小さな改善にとどまり、公開での発信もどこか繰り返しのように感じられるようになっていました。新鮮さを取り戻すために彼が始めたのが、SwiftUI でネイティブに構築したミニマルなポモドーロタイマー、FocusKit です。

FocusKit は HabitKit を置き換えるためでも、すぐに同等の収益を生み出すためでもありませんでした。新しい技術を学び、ネイティブな iOS デザインに向き合い、創作の勢いを取り戻すためのプロジェクトだったのです。

ローンチも意図的にプレッシャーの少ない形で行われました。初期の収益は控えめですが、このプロジェクトの目的は別のところにあります。Sebastian氏が関心を持ち続け、好奇心を保ち、作り続けられる状態を維持することです。


Sebastian氏の歩みが示す、インディーアプリ成長の本質

Sebastian氏のストーリーは、巧妙なハックや攻撃的なグロース戦術によって築かれたものではありません。土台にあるのは、次のような基本の積み重ねです:

  • 自分自身が本当に使いたいプロダクトをリリースすること
  • 特に初期段階において、進捗を正直に共有すること
  • 居心地が悪く感じるほど長く改善を続けること
  • プロダクトがそれに値する状態になってから、流通(ディストリビューション)の複利効果に任せること

振り返れば成長は突然に見えます。しかし実際には、何か月にもわたる静かな積み重ねの先に訪れたものでした。


🎧 Sub Club のフルエピソードをぜひお聴きください。Sebastian氏が、成長が止まっているように感じた時期や挫折、そして当時は意味があるように思えなかったものの、最終的には大きな意味を持つことになった決断について詳しく語っています。